蘇生中止容認、広がる 52消防本部の25%、処置望まぬ場合 朝日新聞社調査

朝日新聞 2019年6月25日

 自宅や高齢者施設で最期を迎える人が増える中、心肺停止になった際に家族らが119番通報して、駆けつけた救急隊に蘇生処置を断るケースが相次いでいる。その際、都市部の消防本部の25%が条件つきで蘇生中止を認めていることが、朝日新聞の調査でわかった。中止容認に向け検討を進める本部もあり、広がりをみせる。だが中止について国のルールはなく、救命が使命と考える隊員は、ときに強く葛藤する。▼2面=葛藤する現場
 本人が蘇生を望まず、事前に主治医と意思を確認していても、家族らが119番通報することがある。動転したり、夜間で医師と連絡がとれなかったりするためだ。一方、総務省消防庁の基準は生命に危険があれば応急処置を行うと規定し、消防法は蘇生中止を想定していない。
 対応は地域ごとにわかれる。朝日新聞が5月、都道府県庁所在地と政令指定市の計52消防本部に聞くと、蘇生拒否への対応方針を決めていたのは39本部(75%)。26本部は家族に説明や説得をして蘇生する方針だが、広島や長崎など13本部(25%)はかかりつけ医に指示を受けることなどを条件に中止を認めていた。
 
■救命の「ふり」、忍びなさ今も
 東北地方の消防本部にある晩、119番通報が入った。「がん末期の高齢患者の呼吸が止まった」。救急隊長は、同僚とともに通報があった家に入った。蘇生処置を始めようとすると、家族とみられる女性が「やめてください」と止めに入った。事前に本人と医師が話し、延命はしないと決めていた。ただ夜間に呼吸が止まった時の対応は決めていなかった。思わず女性は119番してしまったという。
 隊長が、患者のかかりつけの病院に電話し、状況を説明すると、医師は「救命は必要ない」と即答し、続けた。「そのまま患者をうちの病院に運んでほしい」
 この消防本部のルールでは、救命の可能性がある人に心肺蘇生しない選択肢はない。隊長がそう説明すると、医師は「蘇生するふりをして運んで」と頼んだ。それも応じられなかった。「では全力で救命して運んで」。医師が折れた。
 心臓マッサージをするため、やせた体の胸の中心を手のひらで押した。規定の深さ5センチまで押し下げれば、肋骨(ろっこつ)が胸骨から外れる予感がした。忍びない気持ちがこみ上げ、結局、押すふりをして運んだ。活動記録には「全力で救命しながら搬送した」と書いた。
 5年ほど前の出来事だが、隊長だった男性は今も鮮明に覚えているという。

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