【東京】公立福生病院の透析終了、「真摯な意思は明らか」日本透析医学会調査、透析の新提言、2019年度末に

M3.comレポート 2019年6月1日 (土)配信橋本佳子(m3.com編集長)
 日本透析医学会は5月31日、公立福生病院(東京都福生市)での透析継続の終了(透析終了)が報道された44歳女性の事案について、「血液透析を継続するのは臨床的に困難な状況とも推測される。自ら血液透析終了の意思を表明しており、その意思が尊重されてよい事案であると判断とする」との内容のステートメントを公表した。他の腎代替療法を模索していたものの、女性の血液透析終了の意思は固く、「透析終了の真摯な意思は明らかであった」とした(同医学会ホームページに全文掲載)。 透析終了は苦痛を伴い死亡に至る可能性があるため十分な体制で慎重な検討を行い、透析終了後も医療チームと患者・家族間で、人生会議や緩和ケアプランについて十分な話し合いがなされるべきだとも指摘した。 44歳女性以外にも、2013年4月から2019年2月までの末期腎不全患者の透析非導入19例、透析終了事例4例の計23例について調査。「透析非導入に至った経緯は、臨床的・倫理的に日常的診療から大きな逸脱はなかったと考えられるもの」と判断した。 日本透析医学会は、今年3月の公立福生病院での「透析終了」の新聞報道を受けて調査委員会を発足。さらに医学的・倫理的な検証を行うため、外部委員を交えた「拡大倫理委員会」を設け、議論を重ねてきた。 一連の検討を振り返り、「医療者側の理解と、患者側の理解にはまだまだ大きな隔たりがあり得ることを、改めて認識した」とも述べ、分かりやすい言葉で繰り返し説明するとともに、「意思確認書の取得とカルテへの記載」の重要性も強調した。 日本透析医学会は、2014年に「維持血液透析の開始と継続に関する意思決定プロセスについての提言」を公表している。今回の調査・検証を通じて、「現在の医療状況にそぐわない点があることを認識した」とし、2018年の厚生労働省の「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」なども踏まえ、「透析の開始と継続に関する意思決定プロセスについての提言作成委員会」を設置、終末期以外の患者の意思決定プロセスなどを追加して、2019年度中に新たな提言を作成する方針を表明した。
学会は捜査機関や裁定機関にあらず ステートメントではまず、「我々の立ち位置は、あくまでも多様な価値観を持つ全ての患者に対して、最良の医療とケアを提供するために学術研究団体として最善の努力をすることにある」と明示。捜査機関や裁定機関ではなく、「善悪」を判断すべき立場にもないと記載した。調査の目的として、個々の症例の判断ではなく、(1)事例の問題点を明らかにする、(2)明らかにされた問題点に対して、学術的な観点から議論する、(3)今後の医療のあり方、特に最良の医療を提供するための指針を策定する――の3点を挙げた。 調査は、報道された44歳女性の事例のほか、透析非導入19例、透析終了事例4例の計23例を対象に実施。主に公立福生病院の資料等に行い、関係者との面談は実施していない。調査委員会での調査後、拡大倫理委員会に調査資料と調査結果(以下、調査報告)を付託するという流れで進めた。
「諸種の合併症を有し、各回透析時に溢水、穿刺困難だった」 調査委員会は、公立福生病院は、維持透析病院・施設ではなく、透析導入や他疾患での入院患者の透析を行うタイプの病院であり、当該患者らは、維持透析を長く行っていたわけではなく、同病院で治療を終えた後は、改めて透析を希望すれば他施設を希望・選択することが可能な状況にあったとした。 44歳女性は、内シャントの管理目的で公立福生病院を約半年間隔で受診。腎移植も勧められて専門外来も受診しており、透析に代る腎代替療法の説明も受けていた。諸種の合併症を有し、各回透析時に溢水、穿刺困難などのトラブルに見舞われたことから、「血液透析の長期継続に対して、患者に苦痛や負担、困難が伴った可能性があるようだ」とした。 さらに、この44歳女性は、血液透析時、透析バスキュラーアクセス(シャント:動静脈吻合)が閉塞して再建のめどが立たず、代替のカテーテル挿入による透析を明らかに拒否していた。 以上の状況から、「当時の状況では持続的な体外循環が不可能と判断され、この経緯を踏まえて、一連の透析終了の状況に至った事案ではないかと考えた」とした。透析終了の実際の過程で、意思確認の方法、意思確認書の存否、多職種による説明、末期時の意思翻意の確認、呼吸苦などの苦痛緩和ケアなど、現場での状況および一連のプロセスがどの程度なされていたかについても、提出資料から判明する限りにおいて調査。 その他、透析非導入19例、透析終了事例4例についても、病院の提出資料等を基に調査した。
「血液透析継続は、臨床的に困難な状況と推測」 拡大倫理委員会は、調査委員会の調査報告を受け、44歳の女性について、 (1) 透析終了を考慮することの医学的・倫理的妥当性、(2) 透析終了の意思決定プロセスの妥当性、(3) 透析終了後の緩和ケアの相当性――について検討。「維持血液透析の開始と継続に関する意思決定プロセスについての提言」に準拠しているかの判断は、本症例が終末期の症例とは判断できないことから、議論をしていない。 「重篤な心・血管系合併症を有しているとのことから、また、内シャント不全を繰り返していることと、カテーテルを用いた血液透析を希望していないことから、血液透析を継続するのは臨床的に困難な状況とも推測。これら臨床的諸事情を鑑みると、患者が自ら血液透析終了の意思を表明しており、その意思が尊重されてよい事案である」と判断。「生命維持のために他の腎代替療法を模索していたものの、本症例では患者の血液透析終了の意思は固く、透析終了の真摯な意思は明らかであった」とつけ加えた。 今後の課題として、患者の意思は尊重されるべきでだが、「透析終了は苦痛を伴い死亡に至る可能性があるため十分な体制で慎重な検討を行うこと、また透析終了後も医療チームと患者・家族間で人生会議や緩和ケアプランについて十分な話し合いがなされるべきではないか」と付記。 透析非導入19例、透析終了事例4例については、「何らかの腎代替療法が必要な腎不全状態で、透析非導入や透析終了は、主治医から持ちかけられたものでなく、患者本人もしくは家族の意思であった」、「透析非導入に至った経緯は、臨床的・倫理的に日常的診療から大きな逸脱はなかったと考えられる」とした。インフォームド・コンセントも、多職種で構成した医療従事者と患者・家族間で複数回実施されており、適切に行われていたようだとした。 ただし、調査報告には19例の透析非導入に至った経緯や患者・家族の意思は詳細に記載されていたものの、「医療従事者側からの具体的な説明内容がどうであったかは分からないため、今後は、これもできるだけ詳細に記載するのが望ましいと思う」とも付記。調査報告からは、透析非導入症例において、文書による意思確認書が取得されたかどうかは不明だったという。

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