医療ニーズの高い要介護者のケアマネジメント、訪問看護師等がケアマネ支援を―日看協

MedWatch 2019年5月20日
 要介護者・要支援者の医療ニーズが多様化する中、介護支援専門員(ケアマネジャー)からの疑問等に訪問看護師等が答え、また相談に乗り、さらに必要に応じて利用者のもとを同行訪問することなどが重要である―。 日本看護協会は5月16日に、こういった内容を盛り込んだ「『医療ニーズを有する利用者のケアマネジメントに関する看護師による介護支援専門員への相談支援事業』実施の手引き」を公表しました(日看協のサイトはこちら)。
利用者の医療ニーズが多様化する中、訪問看護師が相談・支援を、さらに同行訪問を 公的介護保険サービス利用の大きな流れは、▼市町村で要介護判定を受け、「要介護」「要支援」との認定を受ける → ▼介護支援専門員(ケアマネジャー)がアセスメント(利用者の状態等の評価)を行い、介護支援計画(ケアプラン)を立てる → ▼介護サービス事業者からサービス提供を受ける → ▼効果等を踏まえケアマネジャーがプランの見直しを行う―と概括できます。 このうちケアマネジャーによるアセスメントやケアプラン作成は「ケアマネジメント」と呼ばれ、高度の専門性が要求されます。 ところで、昨今、「在院日数の短縮」や「在宅医療の充実」などにより、医療ニーズの高い介護保険サービス利用者が増加しています。こうした利用者に適切なケアマネジメントを行うには「医療に関する知識」が不可欠です。 例えば、末期のがん患者が「最期を自宅で過ごしたい」として、在宅療養を送るケースがあります。末期がん患者の多くは要介護状態にあり介護保険サービスを利用しますが、併せて「疼痛管理」などの医療的ケアが必須となります。この場合、医療保険の訪問看護を利用することができますが、「医療保険の在宅サービス」と「介護保険の居宅サービス」とを連動させることが重要で、そのためにはケアマネジャーが医療に関する知識」を一定程度保有し、医療職(医師や看護師)と密接に連携することが不可欠となるのです。一方、ケアマネ側には「医療ニーズへの対応」に不安を覚えるケースも決して少なくないようです。   そこで日看協では、主に▼ケアマネ、訪問看護師をはじめ、在宅医療・介護サービス提供や調整に携わる医療職・介護職▼自治体の在宅医療・介護の体制整備事業の担当者▼医療・介護職種を対象とした相談支援事業や教育研修事業に携わる担当者・事業者―を対象に、「ケアマネが利用者の医療ニーズに関する課題を地域の訪問看護師等に相談し、支援・助言を円滑に受けられる」ことを目指し、手引きを作成しました。 まず手引きでは、日看協の実施した「電話相談や同行訪問によりケアマネに支援・助言を行う相談支援モデル事業」(267件:電話相談142件、対面相談49件、同行訪問63件、 メール・FAX13件)の中から事例を紹介しています。 利用者の抱える主な疾患としては、▼認知症(アルツハイマー病を含む):32.6%▼悪性新生物:24.0%▼脳血管疾患(脳梗塞、くも膜下出血など):18.0%▼精神疾患(うつ、統合失調症):14.2%―などが多く、医療的処置(複数)としては▼服薬管理(薬の飲みすぎ、飲み忘れへの対応等):38.6%▼排便コントロール:11.2%▼酸素療養:7.9%▼カテーテル(留置カテーテル等の管理):6.7%▼褥瘡の処置:6.7%▼注射・点滴の管理:6.4%▼創傷処置:5.2%―などがなされている状況です。 ケアマネからの相談事項(複数)としては、▼疾患や治療方針の理解:46.9%▼訪問看護サービス導入の必要性の判断:39.7%▼医師(入院・外来診療)との連携:39.1%▼訪問看護師との連携:30.2%▼利用者や家族・介護者への訪問看護の必要性の説明:26.8%▼利用者のアセスメント及びケアプラン作成:23.5%―などとなっています。  訪問看護は、上述したように「医療保険サービス」と「介護保険サービス」の双方にまたがり、また利用者の状態等によって利用可能回数が異なるなど、複雑な制度となっています。また、具体的にどういった内容のサービス提供が可能なのか把握しにくい場合もあるようです。あるケアマネからは「通院で点滴を受けている利用者がいるが、歩行に支障がある。訪問看護での点滴は可能か」との相談があったといいます。これに対し、「利用者・家族が訪問看護に同意し、主治医から指示書が交付されれば点滴の実施は可能である」ことを答えるとともに、「通院困難であれば他の支援も必要かもしれない。一度、訪問看護師による面談とアセスメントを行ってはどうか」と助言しています。 またアセスメントに関しては、あるケアマネから「がんに罹患した要介護者について、依然はデイサービスを利用していたが体調不良で中止してしまった。主治医受診に同行したが、病状を十分に把握できなかった。在宅サービス再開について助言が欲しい」との要望がありました。この相談に対しては、▼病状は安定している▼認知症があり昼夜が逆転しがちである―という情報も踏まえて、「デイサービスを再開して日中の活動量を増やし、夜間に睡眠できるようにしてはどうか」「病状管理や家族の介護相談のためにも、週に1回程度の訪問看護を導入してはどうか」とアドバイスしたといいます(家族の同意を得て、訪問看護を後に導入)。 さらに状態悪化で入院し、治療終了後に退院する場合には、▼本人の疾患・状態の把握▼今後の変化予測▼本人や家族の意向確認▼退院した病院との情報共有▼在宅でのサービスの利用調整―など、ケアマネの役割が非常に多岐にわたります。この点、やはり訪問看護師等の支援によって、ケアマネ負担を軽減するとともに、安心してケアマネジメントを行うことが可能になります(結果、ケアの質向上にもつながる)。例えば、認知症の要介護者ががんで入院治療し、退院する際に、あるケアマネから「廃用症候群で移動や排せつに一部解除が必要である。退院カンファランス当日に退院し、退院時サマリーもない」として、訪問看護師に相談がありました。これを受け、看護師から病院に情報提供を依頼するとともに、利用者宅を同行訪問し、「がんの進行で痛みや腹水貯留などが生じる恐れがあり、訪問看護の導入でこれらに対応できる」「福祉用具の導入も検討してはどうか」とアドバイスしています。 こうした相談・支援事業に対し、現場ケアマネは▼今後の自身の行動や判断に活かせる助言が得られた:50.3%▼疾患や治療方針に対する理解を深められた:49.2%▼訪問看護サービス導入の必要性の判断ができた:36.3%▼利用者の病状の変化に伴うプラン変更の判断ができた:36.3%▼医師(入院・外来診療)との連携ができた:36.3%▼利用者や家族・介護者に訪問看護の必要性を説明できた:27.9%▼.自分が把握していなかった課題を発見できた:27.9%―などの効果を感じています。 効果に鑑みれば、医療機関や訪問看護ステーション、地域包括支援センターなどに、ケアマネから日常的に相談・支援を行える環境の整備、さらには個別ケースに十分に対応できるよう「必要に応じて訪問看護師等が同行訪問する」環境の整備が必要と考えられます。日看協では、相談・支援を「モデル事業」にとどめず「事業化する」ことも併せて提言しています。  この点、山梨県では県看護協会に委託し、2017年度からの5か年計画で、県内の訪問看護師等を対象とした「トータルサポートマネジャー養成事業」を実施。トータルサポートマネジャーは、これまで見てきたようなケアマネ等への相談・支援を行うもので、全国で参考にすべき事例と言えます。

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