【愛知】名古屋市の在宅医療は「夢のよう」―名古屋市医師会 在宅医療・介護連携委員会 古山明夫委員長に聞く◆Vol.1

M3.com 2019年4月17日 (水)配信m3.com地域版
 名古屋市では市医師会が中心となって医療と介護の連携を推進してきた。2016年には市内全16区に支援センターの設置が完了し、ICTツールには約7万7000人もの患者が登録されている。これまでの経緯と現状、そして今後について、名古屋市医師会の在宅医療・介護連携委員会の古山明夫委員長にお話を伺った。(2019年2月15日インタビュー、計3回連載の1回目)
――名古屋市では市医師会が中心になって医療と介護の連携システムを構築しているそうですね。古山 はい。名古屋市医師会は愛知県と名古屋市の支援を受け、在宅医療・介護連携システムを構築してきました。在宅医療への理解が深かった杉田洋一前会長が行政関係者との話し合いを進めて実現したものです。医師会の方から医療と介護の連携を推進しましょうと持ち掛けた形で、当時は画期的だったと思います。そして現在の「名古屋市在宅医療・介護連携推進事業」へと発展してきたのです。
――その事業はどういったものでしょうか?古山 3つの目的があります。(1)新規在宅医の参入促進、(2)在宅医療・介護に携わる多職種の負担軽減、(3)在宅医療・介護の安心・安全・均てん化――です。要は「孤立している医師をみんなで支えましょう。地域医療をしやすいように案内しましょう」ということです。この目的を果たすために在宅医療・介護連携支援センター/在宅医療支援センター(愛称;はち丸在宅支援センター)を運営し、様々なサポートを行っています。
名古屋市のはち丸在宅支援センターの主な役割 これらのサポートを分類すると大きく4つの機能があります。(1)初めてでも医師が安心して往診・在宅医療ができるように多職種に関する情報提供を行い連携の輪を作るお手伝いをし、急変時も対応できる体制を整える「相互サポートシステム」。(2)夜間や休日の相談窓口となる「コンタクトセンター」。(3)ICTを活用して多職種間で情報をスムーズに共有する「情報共有システム」、(4)1週間ほど入院して検査を行い、患者の状態を把握した上で在宅療養への移行ができるようにする「在宅アセスメントシステム」――です。
 地域医療で何か困ったことがあれば、名古屋市内の全16区にそれぞれ設置しているはち丸在宅支援センターまでお気軽にお問い合わせいただければと思います。
――古山先生ご自身も在宅医療を実践されておられるのですよね。
古山 中村区にある私の医院は来年で開院60年を迎えます。父の時代からずっと往診をしていて、2代目の私も続けています。診療所を継ぐなら往診は当たり前だと覚悟していました。父はよく夜中に起こされていましたが、私の場合はやってみるとそれほど大変じゃなかったですね。私が医院を受け継いだ20年前と比べると、今の環境はまるで夢のようです。
――夢のよう……それほどの違いがありますか?
古山 当時は私一人で全部やっていたのです。看護師に頼んで、介護職に入ってもらう段取りをして、非常に大変でした。24時間体制の加算がついた辺りから、ご近所で開業している先生方と5人で連携を組んで対応してきました。 父の時代は開業医に頼るしかなかった時代だったので、夜間に電話がたくさんかかってきていました。現在は救急病院が対応してくださるので、本当に夜間の呼び出しは減りました。患者の方も遠慮があるのか、深夜は救急車を呼ばれることが多いようで、翌日になって救急に行ったと聞くことが多いですね。それで、あわてて事後的に紹介状を書いています。救急の先生方が頑張ってくださっているのはとても有難いです。 さらに夜間の呼び出しが少なくなった大きな理由がもう一つあります。それは「地域のナースコール」があるからなんです。24時間交代で対応している訪問看護ステーションと連携することで、患者からの深夜の連絡が約4分の1に減りました。調査すると、夜間に電話があったうちの4分の3は緊急性がなく、看護師の対応で済むものでした。実際起こされるのは、年間数人の看取りを含め二桁はいきません。患者には「病院に入院しているときは、何かあったらまずナースコールを押すでしょ」と話をして納得していただいています。 昔は訪問看護ステーションなんてありませんでしたから、このシステムがなければ夜間に何回も起こされていたでしょうね。こういった連携ができるステーションについては、はち丸在宅支援センターにご相談いただければ情報提供できると思います。
――昔と今とでは在宅医療を取り巻く環境は大きく変わったのですね。
古山 はい、とても楽になりました。さらに、先ほど触れた「在宅アセスメントシステム」は、在宅医だけでなく家族にもメリットがあります。 家族のレスパイトのためにショートステイを利用する場面があります。名古屋市の各区には在宅患者の急変時に対応をお願いできるバックアップ病院というシステムがあります。それらの病院との連携で1週間くらいのアセスメント入院をさせてもらう仕組みがあります。病院の先生と病状を相談し入院をお願いするわけです。入院中に、在宅医療ではできないような検査を一通りやっていただけます。 アセスメントの項目は病院によって多少の違いはありますが、採血などの検査の他、総合リハビリテーション、栄養や摂食・嚥下の状態、運動機能、褥瘡、認知症などです。このようなデータをもとに、今後の在宅医療をどう進めていくべきか検討することができます。病院ですから家族も安心して休息を取ることができます。いつも利用できるわけではありませんが、非常に有用なシステムと考えています。
――昔のイメージがあって、往診や在宅医療にハードルを感じている先生がいらっしゃるかと思いますが、今ではそこまで身構えなくていいかもしれませんね。
古山 そうですね。在宅療養支援診療所(在支診)の条件に「24時間対応」と書いてありますから、気が引けてしまう気持ちは分かります。 でも、今は多職種で情報を共有してサポートし合えるし、バックアップ病院のサポートもあるので、もうちょっと気楽に、とりあえず往診からはじめて、慣れてきたら在支診になることを考えればいいんじゃないでしょうか。先ほどお話した通り、夜中に起こされることは月に1回あるかないかという程度ですから。 開院してすぐはあまり往診の依頼がないと思いますが、5年10年と真面目に診療していると患者の高齢化によって往診の依頼がくるようになります。いずれは在宅医療を迫られる局面が来るわけです。 名古屋市では、そういった先生方をサポートする仕組みがここ数年で整ってきていますから、あまり心配せずに飛び込んできていただきたいと思います。
古山明夫氏(名古屋市医師会 在宅医療・介護連携委員会 委員長/古山医院院長)

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