福祉用具貸与の上限価格設定で「超高額」事例は排除、2019年度は上限価格据え置き―介護給付費分科会(2)

MedWatch 2019年4月11日
 2018年度の介護報酬改定で「福祉用具貸与」の上限価格設定が行われ、その結果、問題視されていた「超高額」事例(同一製品であるにもかかわらず、他に比べて極めて高額な貸与価格を設定している事例)は排除されるなどの効果が生じている。一方、福祉用具貸与事業者の経営にも一定の影響が出ており、2019年度には上限価格の見直し(引き下げ)は行わない―。 4月10日に開催された社会保障審議会・介護給付費分科会では、こういった方針も固められました。4月10日に開催された、「第170回 社会保障審議会 介護給付費分科会」 ここがポイント! 1 2018年度介護報酬改定で、福祉用具貸与の価格について2つの見直し 2 上限設定で「超高額事例」は排除されたが、事業者の収益に影響も 3 上限価格設定により、2018年10月分実績で4億5000万円強の介護費適正化
2018年度介護報酬改定で、福祉用具貸与の価格について2つの見直し 公的介護保険サービスの1つとして福祉用具貸与があります。▼車いす(付属品含む)▼特殊寝台(ベッド、付属品含む)▼床ずれ防止用具▼体位変換器▼手すり▼スロープ▼歩行器▼歩行補助つえ▼認知症老人徘徊感知機器▼移動用リフト(つり具の部分を除く)▼自動排泄処理装置—の貸与に係る費用の一部を保険給付するもので、いわゆる「在宅限界」(要介護状態となっても住み慣れた在宅生活を可能とする)を高めることが狙いです。 しかし、福祉用具貸与の価格については「事業所の裁量」(つまり言い値)となっているため、従前「まったく同じ製品であるにもかかわらず、一部事業者が極めて高額な貸与価格を設定している」事例があることが問題視されていました。 このため2018年度の介護報酬改定において、福祉用具貸与に関する次の2の見直しが行われました。ただし、1か月当たりの貸与件数が100件に満たない製品では、価格の振れ幅が大きくなることから、対象から除外されています(関連記事はこちら)。(1)全国の平均的な貸与価格を公表し、福祉用具専門員が、利用者にこれの情報を説明することを義務付ける(2018年4月および10月から段階的に実施) 利用者が情報に基づいて「適切に製品・事業者を選択する」機会を確保するもので、福祉用具専門員は、利用者に対し▼当該製品の貸与価格▼同一製品の全国平均貸与価格▼当該製品の特徴▼同一の機能を持つ他の製品の情報―を十分に説明することが必要です。2018年度介護報酬改定(福祉用具貸与)1 (2)福祉用具貸与価格に上限を設ける(2018年10月実施) 福祉用具貸与に関し、保険請求の上限価格を「全国平均価格+1SD(標準偏差)」に定めるものです(同一製品でも、仕入価格や搬出入の経費、保守点検等の費用が事業者により異なることから一定のバッファ(平均から1SD)を置く)。上限を超過する価格を設定している場合、当該事業者の貸与する当該製品については「保険給付を認めない」(つまり全額自己負担となる)こととされており、上限価格は毎年度見直す方針が示されています。 
上限設定で「超高額事例」は排除されたが、事業者の収益に影響も 今般、2018年度介護報酬改定の効果検証調査の一環として「福祉用具貸与価格の適正化に関する調査研究」が行われました。その結果を眺めると、例えば次のような実態が浮かび上がってきました。
(A)「貸与額総額に占める割合」ベースで、「上限を超える貸与」は2017年10月時点は1.5%存在したが、2018年10月(上記見直しの実施直後)時点では0.0%に減少した(下記のように存在しないわけではない)(B)「上限を超える貸与」が1件以上あった事業所は全体の95.7%で、請求件数ベースでは10.0%、利用者ベースでは25.5%であった (C)貸与価格について「増額が1商品以上あった」事業所の割合は17.1%、「減額が1商品以上あった」事業所は87.6%、「商品の変更が1商品以上あった」事業所は15.2%であった(D)貸与価格の変更(減額・増額等)に伴って生じた事業所の負担としては、「利用者との契約変更手続き」(70.8%)、「商品カタログの価格修正・再印刷の発生」(69.7%)、「事業所内システムの改修作業の発生」(68.1%)などが多い (E)2017年度から18年度にかけて74.2%の事業所で「収益減少(減少見込みを含む)」となった(F)上限超過商品については「サービスの変化」(訪問頻度の減少や訪問時間の短縮)が2.7%あったが、非超過商品では0.9%であった(G)2018年10月実績から次回の上限価格設定(新たに平均貸与価格を算出し、これに1SDを乗せた価格が上限となる)を試算すると、「上限超過商品の利用者」は増加(現在の25.5%(B)から29.6%に増加する)(上限価格が下がっていくため)し、福祉用具貸与サービスの総費用について「削減度合いが縮小する」(2018年10月分の2.0%削減から次回は0.7%に縮小する、この点、後に少し詳しく見てみます)
 ところで、上限価格は上記(2)に照らせば、毎年度「調査によって平均価格を算出し、ここに1SD分のバッファを乗せる」ことで機械的に算出でき、見直していくようにも思えますが、介護給付費分科会では「施行後の実態も踏まえつつ実施していく」ことも定められています。 厚生労働省老健局高齢者支援課の武井佐代里課長は、上記の効果検証調査から、▼高額な保険請求は相当程度排除されている(A)▼25%の利用者では上限超過商品を利用しているが(B)、サービスの変化は3%未満にとどまっている(F)▼上限の見直しにより、影響が拡大していくと想定される(G)▼福祉用具貸与事業所の74%で収益が減少し(E)、またカタログ修正などによるコストが発生している(F)―状況が明らかになった点に鑑み、「2019年度には上限価格の見直しは行わない。ただし、新商品については新たな上限価格設定を行う」方針を提示しました。 上限価格設定等の主目的は「極めて高額な貸与価格」の排除にあり、その点が達成されていること、事業者の経営状況が厳しくなっていること、などを踏まえた判断と言えます。事業者の経営が極めて厳しくなり、サービスから撤退してしまえば、利用者の生活に影響が出てしまうためです。 介護給付費分科会では、この方針を「是」とする意見が複数出され、2019年度には「(2)に基づく上限価格の見直しは行わない」ことが固められました。ただし、「毎年度の見直し方針が決まっている中で、価格見直しルールを明確にする必要があるのではないか」(伊藤彰久委員:日本労働組合総連合会総合政策局生活福祉局長)、「ルールがないままに都度、価格を見直す、維持すると考えるのはいかがなものか(齊藤秀樹委員:全国老人クラブ連合会常務理事)との指摘も出ています。 今後、介護給付費分科会において「上限価格見直しのルール」を検討していくことになります。上記(2)のように「上限価格設定」方法は極めて明確になっていますが、「見直しの必要性」を判断する基準などは決まっていません。今後の議論を待つ必要がありますが、例えば、「上限超過価格での利用者割合」などを指標とし(この割合が多ければ全額自己負担の利用者が多いことを意味する)、▼○%程度以上であれば上限価格は据え置く▼○%未満であれば上限価格は見直す(引き下げる)―といった基準を設定することなどが思い浮かびます(あくまで編集部の想像に過ぎません)。
上限価格設定により、2018年10月分実績で4億5000万円強の介護費適正化 なお、上限価格設定により、多くの商品では「貸与価格の引き下げ」が行われました(A-C)。これが介護保険財政に及ぼした影響について、厚労省老健局老人保健課の眞鍋馨課長は、2017年10月実績と2018年10月実績を比較し「4億5000万円強」になったことを報告しました(単純に12倍すれば、1年間で54億円、介護費の適正化が実現されたことになる)。上限超過商品については保険給付から除外されるため、この分で3億4000万円強の削減がなされ、また上限超過はしていないものの、貸与価格の減額がなされた商品があり、この分で6800万円強の削減がなされるなどしています。 もっとも商品の中には「価格の引き上げ」がなされたものもあります(C)。例えば上限額が1万5000円に設定された商品について、従前は1万円の貸与価格を設定していた事業者が、1万5000円に価格を引き上げるようなケースです。地域に多数の事業者があれば、上述(1)の仕組みによって「競争」が働き、価格は低下していく傾向にありますが、地域の事業者が少ない場合などには、競争が働きにくく、こうした状況が生じやすくなると言えます。 この点に関連して、伊藤委員は「ある商品について上限以下に価格を下げ、収益を確保するために別の製品で価格を上限近くまで引き上げる、などの事態が生じている可能性もある」と指摘し、さらなる調査・分析を要望しています。

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