【神奈川】訪問看護、ハラスメント被害深刻 「経験ある」7割
神奈川新聞 2019年4月10日
在宅医療・介護の進展で、訪問看護師やヘルパーが、利用者・家族から暴力・ハラスメント被害を受ける事例が相次いでいる。神奈川県民主医療機関連合会(神奈川民医連)が発表した「訪問看護師が受ける利用者・家族からの暴力・ハラスメント実態調査」によると、「なんらかの暴力・ハラスメントを経験したことがある」と回答した訪問看護師は約76%に上り、深刻な実態が明らかになった。神奈川民医連では「暴力・ハラスメントは許されないという意識改革が必要」とし、防止策に取り組むとしている。 神奈川民医連は、県内の病院、診療所、介護事業所など95事業所で組織。今回の調査は、加盟の全12訪問看護事業所の訪問看護師77人を対象とし、昨年11~12月に調査票を配布し68人(回収率約88%、男性1人、女性67人)から回答を得た。 調査結果によると、被害経験は、利用者からの身体的暴力が約29%にもなった。利用者からの精神的暴力は約53%、利用者からのセクハラは約56%、家族からの身体的暴力は約4%、家族からの精神的暴力は約19%、家族からのセクハラは約10%だった。何らかの暴力・ハラスメントの経験があるとしたのは約76%にも上った。 そして、暴力・ハラスメントによって、約19%が「身の危険を感じた」、約22%が「仕事を辞めたいと思った」としており、利用者宅という密室で1対1の関係になりやすい中、少なくない訪問看護師が、恐怖と強いストレスに見舞われていることを示した。 一方で、「暴力・ハラスメントを受けた際、上司に報告した」のは約63%に止まった。また、発生時の対応(52人、複数回答)では、「対象者に話しかけながら関わりを継続」(38人)が最も多く、「止めてくださいとその場で明確に意思を伝えた」(17人)を大きく上回った。他は、「理由をつけてその場を離れた」(7人)、「何も対応しなかった」(4人)などだった。 また、組織に希望する対応(52人、複数回答)は、「今後の対応を明確に示してほしかった」(19人)、「具体的対応について話し合う場が欲しかった」(12人)、「事実を認めてほしかった」(8人)、「契約を打ち切ってほしかった」(6人)などが上がった。実態把握やリスクマネジメントの不足、対応マニュアル整備の遅れなどが浮き彫りになった。 こうした状況の背景には、加害者が認知症などのケースもあり、訪問看護事業所の側にも「利用者をケアの対象者と認識しているために、訪問看護師の疾病の理解不足、対応力量の不足としてとらえ、訪問看護師の対応だけに原因を求める傾向がある」という。 片倉博美事務局次長は「看護師の使命感から病気だから仕方ないと我慢してきた。組織的対応も弱かった。しかし、これからは意識改革が必要。加害者も被害者も生まない防止策を取るべきだ。看護師2人で訪問した場合に報酬上で評価することも検討すべきだ」とした。 調査にあたった「訪問看護ステーションいずみ」(横浜市泉区)の長澤幹所長も「スタッフを守れる職場を作りたい。契約書に暴力・ハラスメントへの対応を位置付け明確化する、防止マニュアルの作成、研修の徹底などに取り組んでいきたい」と話した。
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すぐに考えていないけれど、少しでも御関心があれば、とりあえず雑談させて下さいませ。