2020年度改定論議スタート、小児疾患の特性踏まえた診療報酬体系になっているか―中医協総会(1)

Medwatch 2019年4月10日
 2020年度の次期診療報酬改定に向けた議論が、中央社会保険医療協議会・総会で本格的にスタートしました。 4月10日の会合では、「年代別・世代別の課題(その1)」として▼乳幼児期-学童期・思春期▼周産期―の2点をテーマに議論を行いました。 これまでにない「年代別・世代別」「最近の医療と関連の深いテーマ」という切り口での総論論議に、中医協委員からは一部戸惑いの声も聞かれましたが、診療側委員の多くは「これまで曖昧で合った部分が分かりやすくなっている」(猪口雄二委員:全日本病院協会会長)など高い評価を行っています。 本稿では「乳幼児期-学童期・思春期」に焦点を合わせ、「周産期」については別途お伝えします。4月10日に開催された、「第412回 中央社会保険医療協議会 総会」 ここがポイント!  1 小児のアレルギー疾患、継続的な介入が必要だが、診療報酬での評価は十分でない 2 5歳頃から発達障害等に関する受診が、15歳を過ぎると神経障害での受診が増えてくる 3 小児への訪問看護、どう推進していくか
小児のアレルギー疾患、継続的な介入が必要だが、診療報酬での評価は十分でない 2020年度の診療報酬改定に向けて、夏(2019年夏)までの第1ラウンドでは、▼患者の年代別の医療課題▼働き方改革など昨今の医療と関連の深いテーマ―について横断的に議論を行い、秋以降の第2ラウンド(個別テーマ)の議論に結び付けていく方針が中医協で固められています。厚生労働省保険局医療課の森光敬子課長の「隙間に落ちてしまうテーマ・議論がないようにしたい」「総論時点では、報酬にとらわれ過ぎない議論を行ってもらいたい」との考えによるもので、これまでにない切り口での総論論議に注目が集まっています(関連記事はこちらとこちら)。 まず「乳幼児期~学童期・思春期」の医療・医療提供体制に関し、森光医療課長はさまざまな課題があることを整理しました。 その中で特筆できるのが、「小児に多い疾患の特性」と「質の高い医療提供」に関する課題です。 ゼロから19歳において「どのような疾患等での医療機関受診が多いのか」を見ると、▼ゼロ歳児では、予防接種(第1位)・健診等(第2位)に続き、「皮膚炎および湿疹」(第3位)、「アトピー性皮膚炎」(第4位)が目立つ▼1-14歳では、アレルギー性疾患(喘息、アレルギー性鼻炎)が最多となる―ことが分かりました(橙色部分がアレルギー疾患)。 小児のアレルギー疾患については、「乳児期にアトピー性皮膚炎が生じる」→「皮膚のバリア機能が低下する」→「後年、食物アレルギーや気管支喘息などの発症リスクが高まる」という形で行進してしまうことが指摘されています【アレルギーマーチ】(端緒は「湿疹などの皮膚の脆弱性にある」との指摘もある)。このため、早期(乳児期)の適切な介入(治療・管理)が重要であることはもちろん、幼児期・学童期・思春期にわたる「継続的な介入」が極めて重要になってくるのです。 今回のデータからは、まさにこのアレルギーマーチという現象が実際の疾患構成からも裏付けられていると見ることができます(ゼロ歳児の疾患やアトピーが、1歳児以降の喘息・アレルギー性鼻炎につながっている)。 治療に当たっては、当然「かかりつけ医」が、患者(ここでは患児)の状態を全体として把握し、継続的な治療を行うとともに、重症例などでは専門医(皮膚科専門医や呼吸器科専門医など)への紹介を行うことになります。ただし、小児医療においては、こうした「かかりつけ医」の基本的な機能・役割のほかに、▼乳児期から幼児期、学童期、思春期にわたる継続的な介入▼保護者(親など)への指導や相談対応▼生活環境整備に関するアドバイス―といった機能・役割も求められることを森光医療課長は強調しました。 診療報酬ではB001-2-11【小児かかりつけ診療料】が設けられ、小児への総合的な医療提供を評価していますが、▼就学児には算定できない▼一度算定を中止した場合、3歳以上の患児には算定できない―という課題もあります。上述のように「学童期・思春期をも含めた継続的な介入」について、【小児かかりつけ診療料】では対応しきれない部分があるようです(関連記事はこちら)。 秋(2019年秋)以降に、具体的に【小児かかりつけ診療料】の在り方をどう考えるか、などといった議論が行われると考えられますが、診療側委員からは「学校医などとの連携やアレルギー疾患管理の充実を進める必要がある」(松本吉郎委員:日本医師会常任理事)といった具体的な提案も出始めています。
5歳頃から発達障害等に関する受診が、15歳を過ぎると神経障害での受診が増えてくる また、ゼロから19歳において「どのような疾患等での医療機関受診が多いのか」というデータからは、▼5歳になったころから「その他の精神および行動の障害」(発達障害など)が上位(第4位)にくる▼15歳を過ぎると、さらに「神経症性障害、ストレス関連障害および身体表現性障害」も上位(第7位)にあがってくる―ことも分かりました。小児・学童期で「発達障害の疑い」で医療機関を受診する児が増え、また思春期になると「心の病」に罹患する児が増えてくるようです(黄色部分が精神疾患)。 また20歳未満の精神疾患患者数を見ると、2011年(平成23年)頃から「その他の精神および行動の障害」(発達障害など)の患者数が激増していることが分かります(濃い目の緑色部分)。 中医協委員は、この「小児において心の病が多い(増えている)」点に注目し、さらなる分析(例えば発達障害等の患者数が激増している背景として、「実際の罹患者が増加しているのか」それとも「診断基準等が明確になり、これまで診断されていなかった患者が診断されるようになったのか」などを詳しく分析など)を求める意見が相次ぐとともに、「健康診査等の機会を活用して積極的に介入し早期診断、早期治療に結びつける必要がある」(松本委員)、「学校教育と医療施策との整合性が重要であり、文部科学省との連携も検討する必要がある」(今村聡委員:日本医師会副会長)、「小児科から精神科専門医への情報連携などを十分に評価する必要があるが、小児精神科を専門とする医師は少ないようだ。その点をどう考えていくかも重要となる」(城守国斗委員:日本医師会常任理事)など診療報酬にとどまらない幅広い意見が出ています。 さらに、小児の精神疾患に関する診療報酬を見ると、▼I004【心身医学療法】の小児(20歳未満)に係る加算▼I002【通院・在宅精神療法】の小児(20歳未満)に係る加算▼B001の4【小児特定疾患カウンセリング料】―があります。 これらの算定状況を見ると、B001の4【小児特定疾患カウンセリング料】は5歳が最多となるが、I002【通院・在宅精神療法】の小児加算は年齢が上がるにつれて増加していくことが分かりました。森光医療課長は、各点数の施設基準・算定要件を勘案し、「児が小さなうちは小児科にかかり(小児特定疾患カウンセリング料)、成長するにつれて精神科にシフトしていく(通院・在宅精神療法)」傾向にあるのではないかと推測しています。 この点、精神疾患についても「継続的な介入」が必要であると考えられ、各点数の施設基準等を見直すことなどにより、例えば、かかりつけの小児科で「幼児期から学童期、思春期まで一貫した治療等を行える」ような環境の整備なども今後検討課題にあがってくるかもしれません。 なお、精神疾患においても、難病等と同様に「小児期医療から成人期医療への移行期」の支援が重視されてきています(関連記事はこちら)。診療側の猪口委員は「さらに重度の心身障害児が、成長とともにどういった医療機関で医療を受けているのかなどを明確にすることで、診療報酬での対応が望ましいのか、公費での対応が望ましいのか見えてくるのではないか」と指摘しています。
小児への訪問看護、どう推進していくか また医療的ケア児をはじめとした小児に対する「訪問看護」の重要性も高まっています。2018年度の診療報酬改定では、訪問看護を提供した看護師から、医療的ケアが必要な小児が学校へ通学する際に必要な情報を学校へ提供することを評価する【訪問看護情報提供療養費2】が新設されるなど、報酬面の充実も図られています。 この点、吉川久美子専門委員(日本看護協会常任理事)は、▼重症児への対応力の高い訪問看護ステーションを支援すべきである▼【訪問看護情報提供療養費2】は入学時や転学時などに限定されており、より柔軟な算定を認めるべきである▼NICUからの退院支援等を評価する【入退院支援加算3】があるが、ユニットの看護師等が、入院時から退院後を見据えた支援を行うことが重要であり、そうした観点からの育成を図っていく必要がある―という具体的な提案を行っています。 このように新しい切り口での総論論議ですが、医療者ではない支払側委員にとっては「どこまでが診療報酬の範疇に含まれ、どこからが別のテーマになるのか(公費負担医療など)」といった線引きが難しいようで、吉森俊和委員(全国健康保険協会理事)らからは「診療報酬に関連する論点に絞るべきではないか」といった旨の指摘・要望も出ています。しかし、冒頭に述べたように森光医療課長は総論時点では「報酬にとらわれ過ぎない議論」を期待しており、「最終的に診療報酬の議論に絞り込む」ことを念頭に置いたうえで一定程度幅広い角度からの議論が行われることが期待されます。 なお、新たに支払側委員に就任した染谷絹代委員(静岡県島田市長)は、「小児医療については市町村が『助成』競争を行っており、虫刺されなどでも、市販薬を使わずに医療機関を受診してしまう」ことなどを指摘しています。もちろん、「自己負担の在り方」は中医協で結論を正面から議論するテーマではありませんが、「小児医療の特性」の1つであり、社会保障審議会・医療保険部会などに議論がつなげられる可能性も否定できません(従前、正面から一度議論されている)。

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