小児がん治療で免疫失った子供、再接種に広がる助成…大阪・京都市など90自治体

2018/12/27 YOMIURI ONLINE

小児がん治療で免疫失った子供、再接種に広がる助成…大阪・京都市など90自治体

 小児がん治療で予防接種の免疫が失われ、再接種が必要となった子供を対象に、患者側の自己負担だった接種費用を助成する自治体が増えている。患者側の負担が大きいとして患者団体などが助成を求めており、国も制度改正の検討を始めた。

重い負担

 「健康面も家計の面も、不安が大きかった」。そう話す愛知県豊橋市の女性(38)の長女(9)は、1歳の時に肝臓に腫瘍ができる小児がんになり、肝臓移植を受けた。

 長女は2歳で退院したが、今も免疫抑制剤の服用が必要だ。風疹やはしかの抗体ができにくく、何度も予防接種を受ける必要がある。

 女性は入院に付き添い、ドナーとなった夫も会社を休んだ。収入が減る一方で、再接種の費用のほか、交通費や食費などで増えた出費は計200万円近くに上る。

 女性は別の自治体で再接種への助成制度があることを知り、市に要望。市は今年4月から、小児がん治療を受けている子供を対象に助成を始めた。女性は「再接種が必要な子は全国にいる。制度が広がってほしい」と願う。

患者団体が要望

 風疹やはしかなど定期予防接種は、予防接種法に基づいて市町村と特別区が実施。費用の約9割を国が負担し、ほとんどの自治体では無料だ。法が定める回数を超えて再接種する場合は自己負担となる。

 しかし、小児がんなどの治療で、骨髄移植など造血幹細胞移植を受けると、一度得た免疫が高い確率で消失する。抗がん剤治療や免疫抑制剤の服用で免疫が弱まるケースもある。

 1年間で新たに小児がんと診断される子供は全国で約3000人。造血幹細胞移植例(20歳未満)は年550~650例とされる。全ての定期予防接種の対象ワクチンを再接種した場合、10万~20万円以上が必要で、患者の家族らが法改正や助成を求めてきた。

抗がん剤は除外も

 厚生労働省が今秋、初めて実施した調査では、今年7月時点で、大阪市や名古屋市、京都市など90市区町村が助成を実施。そのうち28自治体が全額補助していた。83自治体が近く助成を始める予定で、238自治体も実施を検討している。

 全国に先駆けて、6年前に制度を始めた東京都足立区では、病気治療で抗体が消失し、医師の証明が出たケースに助成。担当者は「がんの子供を支える家庭の経済的負担を少しでも軽減したい」という。

 多くの自治体で、造血幹細胞移植の患者を助成の対象としているが、抗がん剤治療は「免疫が消失することが医学的に実証されていない」として対象から除外している自治体もある。

 大阪府池田市の女性(40)の長男(9)は2年前に白血病になり、抗がん剤治療で寛解したが、今年10月に水ぼうそうが重症化して入院。7年前に接種したワクチンの免疫が、抗がん剤治療で失われたとみられるが、池田市では助成の対象外だ。女性は「感染を広めないために、再接種は重要。対象に加えてほしい」と求める。

 「国が対応すべき課題」として、助成を見送る自治体もある。厚生労働省は「今後、法改正の必要性や制度のあり方について、厚生科学審議会で検討していく」としている。

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