【神奈川】訪日外国人に自由診療の専門病院、市が開設反対

読売新聞 2018年12月23日

 川崎市川崎区で、訪日外国人に保険診療外(自由診療)で最先端医療を提供する「医療ツーリズム」の専門病院を開設する計画が浮上し、市が「現時点では賛成できない」と反対する異例の展開となっている。医師らが限られる中、同区は病床数が過剰で地域医療への影響が懸念されるためだ。医師会も「市民への恩恵がなく是認できない」と反発している。
 市によると、計画しているのは、同区でAOI国際病院などを運営する医療法人社団「葵会」(東京都)。100床の専門病院で、診察は外国人のみ。整形外科や脳神経外科など8診療科や手術室、リハビリ室などを設け、医師ら100人前後の人材をそろえる。
 同区で運営する介護老人施設を移転し、跡地約5387平方メートルに建設。来年12月に着工し、2020年7月の開設を目指す。開設されれば、医療ツーリズムの専門病院は国内初という。
 医療ツーリズムは、治療による滞在や観光などが期待され、最先端技術の海外輸出にもつながるとして国も推進している。葵会もこうしたメリットを強調する。
 ただ、県や川崎市は現状計画での開設に難色を示す。各都道府県は、医療人材や設備を有効活用するため、医療計画を策定し、病床が過剰にならないよう地域ごとの「基準病床数」を定めている。
 川崎区を含む「川崎南部2次保健医療圏」では、基準病床数をすでに600床上回っており、県や市は専門病院の開設で病床数の偏りがより生じるとする。担当者は「医療ツーリズムは否定しないが、市民への医療サービスに影響が出かねない」と危惧する。
 専門病院は自由診療のため、高額の報酬を求めて医師らが流出すると懸念する声もある。川崎市医師会などの「14大都市医師会連絡協議会」は今月14日付で、専門病院の開設を認めないとする決議文を日本医師会に提出した。
 川崎市の福田紀彦市長は6日の市議会本会議で、「現時点では賛成しかねる」と強調。県議会本会議でも21日、ガイドラインなどの策定を国に求める意見書を可決した。

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