ALS、別の疾患薬で治験…iPS使い効果確認

読売新聞 2018年12月3日

 iPS細胞(人工多能性幹細胞)を使って、全身の筋肉が衰える難病「筋 萎縮いしゅく 性側索硬化症」(ALS)の治療効果が期待できる薬を見つけ、ALS患者に投与する臨床試験(治験)を、慶応大の研究チームが始める。ALS患者から作ったiPS細胞に他の疾患用の既存薬を加える実験で、効果が確認されたパーキンソン病の薬が投与される。既存薬を使うため、迅速な治療が期待できるという。
 治験の対象は、ALS発症から5年以内の20~80歳の20人。研究チームは3日から患者を募り、約1年半の間、安全性や効果などを確認する。
 ALSは、体を動かすための神経が壊れていく病気で、主に病気の進行を遅らせる薬による治療が行われるが、薬の選択肢は少ない。
 慶応大の岡野栄之教授(生理学)らは、血縁者に患者がいる「家族性」のALS患者3人の血液からiPS細胞を作り、神経細胞に変化させて病態を再現。1232種類の既存薬と反応させて効果を調べた。
 その結果、全員の細胞で、パーキンソン病の治療薬として知られる錠剤「ロピニロール塩酸塩」に神経細胞の死滅を抑える効果があることが確認された。家族性以外のALS患者22人の細胞を使った実験でも、約7割の16人で効果が確認できた。
 岡野教授は「細胞段階では、既存のALS治療薬の2~3倍の効果があった」と話す。ALS患者らでつくる日本ALS協会の嶋守 恵之しげゆき 会長(51)は「治験がうまくいき、症状の進行が抑えられて身体機能が少しでも残ることに期待したい」とコメントしている。

【解説】臨床応用迅速に
 iPS細胞を使って治療薬を探したり作ったりする手法は、「iPS創薬」と呼ばれて注目されている。患者の細胞から作ったiPS細胞を使い、病気の原因となる細胞を再現すれば、動物実験より人への効果が予測しやすい。さらに今回の治験のように既存薬から候補を選べば、迅速に臨床応用につなげられるからだ。動物実験で安全性を確認する作業が省ける場合もある。慶応大の研究チームは、細胞レベルで薬効を確認した論文の発表から3か月余で治験開始にこぎ着けた。
 同様の手法では、筋肉が骨に変わる難病「進行性骨化性線維異形成症(FOP)」、難聴やめまいなどを起こす遺伝性疾患「ペンドレッド症候群」でも、効果が期待できる薬が見つかり、治験が始まっている。細胞レベルで効果が確かめられた薬が、実際に治療薬として使えるかどうかは未知数だが、名古屋大の祖父江元(げん)特任教授(神経内科学)は「iPS創薬は難病治療に大きな可能性をひらく」と話す。
 既存薬とはいえ、新たな薬効が確認された薬が承認されるには、時間をかけて効果を厳密に調べる必要があるため製薬企業の協力が欠かせない。日本が世界をリードするiPS創薬を軌道に乗せるため、多額の資金がかかる治験に企業の協力を促す体制作りを急ぐべきだ。
          ◇
【筋萎縮性側索硬化症(ALS)】  身体を動かすための神経が徐々に壊れ、全身の筋肉が萎縮する難病。病気が進行すると、呼吸も難しくなる。根本的な治療法はまだない。厚生労働省によると、国内の患者数は2017年度末で9636人。

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