厚労省が「医療・介護DBの連結・解析」⽅針 提供により受益、利⽤者に費⽤負担求める

キャリアブレインマネジメント 2018年11⽉16⽇

 ナショナルデータベース(NDB)や介護保険総合データベース(介護DB)のデータを連結・解析して利活⽤するための基盤整備に向けて、厚⽣労働省の「医療・介護データ等の解析基盤に関する有識者会議」で、5⽉の初会合からこれまで8回にわたり話し合いが⾏われた。厚労省は9回⽬となる15⽇の会合で、社会保障審議会の医療保険部会と介護保険部会へ提出するための報告書案を⽰した。委員からは⼀部の修正を求める意⾒があり、最終の報告書は議⻑に⼀任された。年内には両部会へ提出される⾒通し。
 2017年に閣議決定された「経済財政運営と改⾰の基本⽅針2017」では、健康・医療・介護のビッグデータを連結して医療機関・保険者・研究者・⺠間などが活⽤できるように、20年度の本格運⽤開始を⽬指すことが盛り込まれた。
 このため、NDB(レセプト情報・特定健診等情報データベース)と介護DBの連結・解析と基盤の構築、セキュリティーや効率的な実施体制の確保などの課題、保健医療分野の「その他の公的データベース」との連結などについて、議論を進めてきた。
 報告書案では、▽法律的な対応が必要な課題▽運⽤⾯での対応が必要な課題▽実施体制・費⽤負担のあり⽅▽保健医療分野の他の公的データベースとの関係整理―など、議論の内容が6つの柱に整理された。

■「公益⽬的での利⽤に限定」を明確に規定すべき
 「法律的な対応が必要な課題」では、NDB・介護DBの収集・利⽤⽬的と、両データを連結して解析することを法令などに明確に定めることが必要だとした。
 データの収集・利⽤⽬的に関しては、NDBは「⾼齢者の医療の確保に関する法律」、介護DBは「介護保険法」と、それぞれのガイドラインを組み合わせて規定されていて、利⽤⽬的の範囲が異なる。
 現⾏のNDBの法定⽬的は、基本的に医療費適正化計画で利活⽤することを想定したものとなっていて、幅広く第三者提供で利活⽤していくことを念頭に置いたものとはなっていない=表1=。
 表1 厚労省「医療・介護データ等の解析基盤に関する有識者会議」報告書(案)より

 利⽤の公益性や安全性、透明性を確保しつつ、幅広い主体による利⽤を図るためには、データの第三者提供によって得られた分析・研究の成果の公表を図りつつ、段階的な利⽤の拡⼤を図っていくことが望ましいとした。⼀⽅で、⽬的外利⽤の禁⽌、不適切事案が発⽣した場合の国による報告徴収や命令などの規定についても整備すべきだとした。
 また、NDB・介護DBは、国への提出前に匿名化され、個⼈が特定できる情報が削除された上でデータベースに収載されているが、他の情報と照合することで個⼈の特定につながることがないよう、「匿名性の確保」の重要性についても盛り込まれた。個々の申し出に関して、提供前の個別審査や成果の公表前審査を⾏うなど、現⾏の取り組みをこれからも⾏っていくべきとの意⾒もあった。
 両部会でこれらの意⾒が承認されれば、19年度の通常国会に「⾼齢者の医療の確保に関する法律」「介護保険法」の改正案が提出される⾒通しだ。

■運⽤⾯での対応はクラウドの活⽤も検討項⽬に
 NDBは11年度から第三者提供を開始していて、介護DBも18年度から開始する予定。⼿続きについてはそれぞれのガイドラインで、▽利⽤者による申請書類作成▽有識者会議の意⾒を聴取して提供の可否を国が審査▽国と利⽤者の間で契約を締結し、国が委託した業者が情報を抽出・処理して媒体に保存の上、利⽤者に送付▽国による利⽤者監査と公表物確認―という流れが定められている。
 今後の利⽤ニーズの増加に対応するため、円滑な審査と効率的な⼿続きを実施する⽅策についても検討する。利⽤申請の電⼦化を可能にしたり、データベースの構造やデータの取り扱いに関する正しい理解を促すための利⽤者⽀援を継続的に提供したりすべきだとしている。
 利⽤者の希望に応じて、クラウド環境を利⽤した提供⽅法を選択できるように整備を進めると同時に、安全性の確保への対応とこれらの作業に必要なアプリケーションの整備についても検討する。
 連結解析のための技術的な対応について、20年度に向け、カナ⽒名・性別・⽣年⽉⽇をハッシュ化して作成した識別⼦を基に=表2=、NDBと介護DBの連結解析が可能となるよう、それぞれのデータベースで必要な対応を進めていく。また、21年度以降は以下の対応を⾏うことを検討すべきだとしている。
(1)カナ⽒名・性別・⽣年⽉⽇をハッシュ化して作成した識別⼦による連結精度の検証
(2)個⼈単位の被保険者番号(医療保険)(※)をハッシュ化して作成した識別⼦の整備
 なお、(2)の対応を⾏う場合にも、⼀定の連結の精度を維持する観点から、カナ⽒名・性別・⽣年⽉⽇をハッシュ化して作成した識別⼦の整備も継続することを基本とすべきだとした。

(※)被保険者番号の個⼈単位化とオンライン資格確認については、20年度の運⽤開始を⽬指し、保険者・医療関係者の意⾒を聞きながら、具体的な仕組みを検討中。

表2 「第9回医療・介護データ等の解析基盤に関する有識者会議」参考資料3

 NDB・介護DBの連結・解析と第三者提供については現在、国が責任主体となり運営している。運⽤に要する費⽤は国が予算措置で対応していて、利⽤者に⼿数料などの費⽤負担は求めていない。
 今後は、第三者提供には個別の作業や提供による受益が発⽣していることを踏まえて、第三者提供の制度化の状況も踏まえつつ、原則として、個々の第三者提供に要する作業等に応じた費⽤負担を利⽤者から求めるべきだとした。
 ただし、公益性の⾼い利⽤が費⽤負担によって抑制されることがないよう、費⽤負担の具体的な運⽤⽅法の検討に際しては、個々の利⽤⽬的の公益性などを勘案して、費⽤負担を軽減する仕組みについても検討する。
 また、保健医療分野の他の公的データベースとの連結についても議論されたが=表3=、例えばDPCデータベースで保有する情報は、⽒名情報を収集していないため、NDB、介護DBと同様の識別⼦を⽣成できないなど、現時点での連結解析は困難だ。各DBの課題を解決した上で、連結解析を⾒据えた検討をしていくべきだとしている。
表3 「第9回医療・介護データ等の解析基盤に関する有識者会議」参考資料1

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