「混合介護」のルール緩和、通知を整理【訪問介護】
キャリアブレインマネジメント 2018年10⽉18⽇
厚⽣労働省はこのほど、介護保険と介護保険外のサービスを組み合わせて提供する場合の取り扱いについて、通知を発出した※。今回、いわゆる「混合介護」について、訪問介護や通所介護の分野でルールが緩和された。
介護サービス事業所はもちろん、グループが介護サービスを提供する医療法⼈にも関係するだろうし、在宅医療を提供する医療機関も無関係ではないはずだ。病院でも、関係職種には、退院後の患者へのサービスを考える上で参考になる。⼀度整理しておきたい。
なお、今⽉末には北海道介護福祉道場「あかい花」の菊地雅洋代表に、今回の通知が事業経営に及ぼす影響について解説してもらう予定だ。
※厚⽣労働省⽼健局「介護保険サービスと保険外サービスを組み合わせて提供する場合の取扱いについて」(2018年9⽉28⽇)
■規制改⾰実施計画に基づき、ルールの緩和を検討
介護保険制度では、介護保険サービスと保険外サービスを組み合わせることを⼀定の条件下で認めている。ただ、運⽤⾯では、地⽅⾃治体間で違いが⾒られ、提供する上での障壁になっているという指摘がある。
厚労省は、政府の規制改⾰実施計画に基づき、2017年度の⽼⼈保健健康増進等事業を通じて、保険外サービスを提供する際のルールの在り⽅について検討・整理を⾏った。
通知では、介護保険サービスと保険外サービスを同時⼀体的に提供することや、特定の介護職員からサービスを受けるための指名料、繁忙期・繁忙時間帯にサービスを受けるための時間指定料として利⽤者の⾃⼰負担による上乗せ料⾦を徴収することは認めていないとしている。
その理由として、単に⽣活⽀援の利便性の観点から、⾃⽴⽀援・重度化防⽌という介護保険の⽬的にそぐわないサービスの提供を助⻑するおそれや、家族への⽣活⽀援サービスを⽬的として介護保険を利⽤しようとするなど、利⽤者本⼈のニーズにかかわらず家族の意向でサービス提供が左右されるおそれがあること、指名料・時間指定料を⽀払える利⽤者へのサービス提供が優先され、社会保険制度として求められる公平性を確保できなくなるおそれがあるといった指摘があることを挙げている。
厚労省では、規制改⾰実施計画に基づき、引き続きこれらの課題の整理などを⾏うとしている。
■保険サービスとの区分明確に、利⽤者への丁寧な説明求める
介護保険の訪問介護サービスと、保険外サービスを組み合わせて提供する場合、それぞれを明確に区分しなければならない。利⽤者に「介護保険給付の対象にならないこと」などを説明し、理解を得るほか、運営規程も保険外サービスのものを別途定めたり、会計上も区分したりすることを求めている。
介護保険給付の対象となる指定訪問介護のサービスと明確に区分されるサービスについては、次のような⽅法により別の料⾦設定をして差し⽀えない。
イ 利⽤者に、当該事業が指定訪問介護の事業とは別事業であり、当該サービスが介護保険給付の対象とならないサービスであることを説明し、理解を得ること
ロ 当該事業の⽬的、運営⽅針、利⽤料等が、指定訪問介護事業所の運営規程とは別に定められていること
ハ 会計が指定訪問介護の事業の会計と区分されていること
■訪問介護との「混合介護」が認められる具体例
訪問介護と保険外サービスを組み合わせて提供するには、「訪問介護の前後に連続して保険外サービスを提供する場合」「訪問介護の提供中に、いったん、訪問介護の提供を中断した上で保険外サービスを提供し、その後に訪問介護を提供する場合」の2つのケースがある。
通知では、提供が可能な事例として、▽訪問介護の提供の前後や提供時間の合間に草むしりなどをする▽訪問介護として外出⽀援をした後に引き続き、趣味などのために⽴ち寄る場に同⾏する▽訪問介護の通院などで受診などの⼿続きをした後に、引き続き介護保険の算定対象にならない院内介助を提供する▽訪問介護の提供の前後や提供時間の合間に、同居家族の部屋の掃除、同居家族のための買い物のサービスを提供するーを挙げている。
訪問介護と保険外サービスを組み合わせて提供する場合の例
(1)訪問介護の対象とはならないサービスを利⽤者本⼈に提供
・訪問介護の提供の前後や提供時間の合間に、草むしり、ペットの世話のサービスを提供すること
・訪問介護として外出⽀援をした後、引き続き、利⽤者が趣味や娯楽のために⽴ち寄る場所に同⾏すること
・訪問介護の通院等乗降介助として受診等の⼿続を提供した後に、引き続き、介護報酬の算定対象とならない院内介助を提供すること
※介護報酬の算定対象となる、訪問介護における院内介助の範囲については、「訪問介護における院内介助の取扱いについて」(2010年4⽉28⽇付事務連絡)を参照
(2)同居家族に対するサービスの提供
・訪問介護の提供の前後や提供時間の合間に、同居家族の部屋の掃除、同居家族のための買い物のサービスを提供すること
※利⽤者本⼈分の料理と同居家族分の料理を同時に調理するといった、訪問介護と保険外サービスを同時⼀体的に提供することは認めない
■保険外サービスと組み合わせる場合の順守事項
訪問介護と保険外サービスを組み合わせて提供する場合の順守事項として、保険外サービス事業の運営⽅針を別に定めたり、利⽤者への説明と同意を得ることのほか、利⽤者のケアマネジャーに、契約の締結前後にサービス内容などを報告し、ケアマネジャーは保険外サービスに関する情報を居宅サービス計画(週間サービス計画表)に記載することが求められている。
また、利⽤者の認知機能が低下していることも考慮し、保険サービスとは別サービスであることを理解してもらえるように配慮することなどを挙げている。
(1)保険外サービスの事業の⽬的、運営⽅針、利⽤料等を、指定訪問介護事業所の運営規程とは別に定めること
(2)契約の締結に当たり、利⽤者に対し、上記(1)の概要その他の利⽤者のサービスの選択に資すると認められる重要事項を記した⽂書をもって丁寧に説明を⾏い、保険外サービスの内容、提供時間、利⽤料等について、利⽤者の同意を得ること。なお、保険外サービスの提供時間は、訪問介護の提供時間には含めないこと
(3)契約の締結前後に、利⽤者の担当の介護⽀援専⾨員に対し、サービスの内容や提供時間等を報告すること。その際、当該介護⽀援専⾨員は、必要に応じて事業者から提供されたサービスの内容や提供時間等の保険外サービスに関する情報を居宅サービス計画(週間サービス計画表)に記載すること
(4)利⽤者の認知機能が低下しているおそれがあることを⼗分に踏まえ、保険外サービスの提供時に、利⽤者の状況に応じ、別サービスであることを理解しやすくなるような配慮を⾏うこと。例えば、訪問介護と保険外サービスを切り替えるタイミングを丁寧に説明する等、利⽤者が別サービスであることを認識できるような⼯夫を⾏うこと
(5)訪問介護の利⽤料とは別に費⽤請求すること。また、訪問介護の事業の会計と保険外サービスの会計を区分すること
通知では、保険外サービスに関する利⽤者等からの苦情に対応するため、窓⼝の設置などを求めている。ただし、指定訪問介護事業者は、苦情対応のための措置を既に講じていることから、これを保険外サービスに活⽤することも認めるとしている。
なお、(介護予防)訪問⼊浴介護、(介護予防)訪問看護、(介護予防)訪問リハビリテーション、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、夜間対応型訪問介護を、ペットの世話など保険外サービスと組み合わせて提供する場合も同様の取り扱いにするとしている。
サービス提供責任者については、もっぱら指定訪問介護に従事することが求められているが、業務に⽀障がない範囲で保険外サービスにも従事することは可能としている。
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週1回1時間から働ける柔軟で明るい職場で、子育てママや社会人学生も在籍。
すぐに考えていないけれど、少しでも御関心があれば、とりあえず雑談させて下さいませ。