[論点]患者本位の歯科専門医制度へ…住友雅人氏
読売新聞 2018年10月17日
すみとも・まさひと 一般社団法人日本歯科専門医機構理事長。一般社団法人日本歯科医学会連合理事長。73歳
歯科医師は85%以上が診療所勤務で、その多くはいわゆる一般開業医である。コンビニよりも多いとやゆされる歯科診療所だが、患者さんにとってはアクセスがよいというのは利点だ。
一方で、歯科にも様々な専門分野がある。患者さんは、病状によって専門的な診療を受けたいと思うこともあるだろう。問題は、専門性を持った信頼できる歯科医師を探すにはどうしたら良いか、患者さんにとって分かりやすい仕組みになっていないことだ。
医療法で標榜ひょうぼうが認められている歯科の診療科は、歯科、小児歯科、矯正歯科、歯科口腔こうくう外科の4科だ。また、専門医として広告(掲示)が認められているものには、口腔外科、歯周病、小児歯科、歯科麻酔、歯科放射線の5分野がある。
専門医がいるかどうかにかかわらず、病院や診療所がどの診療科名を標榜するかは自由だ。このため、例えば小児歯科の看板を掲げていても、小児歯科の専門医がいるとは限らない。
この5分野以外にも、数多くの歯科の学会が独自の認定専門医制度を設けている。日本歯科医学会に加盟している学会だけでも専門医・認定医は30以上あり、非加盟の学会などを含めると正確な数は分からないほど多い。
各学会の専門医認定のレベルがまちまちであるため、専門医資格の有無と歯科医療技術が必ずしも一致しないという問題がまずある。また類似の専門医が多く、違いも分かりにくい。
そこで、認定のレベルを合わせ、分かりやすい歯科の専門医制度を整備しようと今年4月に発足したのが、一般社団法人・日本歯科専門医機構だ。日本歯科医学会連合、日本歯科医師会の支援及び協力で設立された。
基本となるのは、厚生労働省の「歯科医師の資質向上等に関する検討会」ワーキンググループによる「論点整理」だ。そこでは、各学会の専門医制度について、客観的評価を踏まえた根本的な見直しが必要とされた。また、今後の専門医養成のあり方を考える際に、研修内容や認定にかかる客観的な評価方法や評価基準などを設定する必要があるとしている。
具体的には、専門医になるのに必要な研修内容や認定の共通基準を、第三者機関である日本歯科専門医機構が作成し、各学会に示す。機構は各学会からの申請を受けて、専門医の認定基準が機構の定めた共通基準を満たしているかどうかの審査を行う。承認されれば、機構のお墨付きを得た専門医として名乗ることができる仕組みだ。
日本歯科専門医機構が認定した学会の専門医はホームページに名簿を掲載し、患者さんが自分の地域の専門医を探せるようにする計画だ。また、学会が新しい専門医を設ける際の評価基準作りなどのサポートも、役割のひとつだと考えている。
歯科分野の専門医の課題を十分に確認しつつスピード感をもって展開したい。日本歯科専門医機構の今後の活動について、見守りとご支援をいただきたい。
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