中⼩病院で特定⾏為研修を実施するメリットは?厚労省シンポで病院管理者が事例紹介

キャリアブレインマネジメント 2018年09⽉12⽇

 地⽅の中⼩病院で看護師の学習環境をつくるには、何か⼤きなきっかけが必要だった―。11⽇に厚⽣労働省が開いた「看護師の特定⾏為研修シンポジウム」で、ヨコクラ病院(福岡県みやま市、199床)の横倉義典院⻑は、特定⾏為研修実施施設となった理由を病院管理者・医師の視点から説明。地域の看護師教育の拡充だけでなく、⾃施設の医療体制やスタッフの意識が⾼められるといった利点を強調した。

■多額の費⽤と職員不在は「⼤きな負担」
 特定⾏為研修の修了者は3⽉現在、1000⼈超。厚労省が当初掲げていた「2025年までに研修修了者10万⼈確保」との⽬標値の達成は困難な状況だが、ヨコクラ病院のように研修実施施設に名乗りを上げる病院が増えつつある。
 「⼈⼝減少、過疎地にあり、医療職の確保が困難な地⽅の中⼩病院」(横倉院⻑)が、他の研修実施施設に看護師を派遣せず、なぜ⾃施設で研修を⾏うことを決めたのか。
 横倉院⻑は、その理由の1つに「費⽤負担」を挙げている。東京や⼤阪などの遠⽅に研修に⾏った場合、旅費と宿泊費を合わせた出張費は、どんなに節約しても1泊2⽇で4万-5万円ほどかかるからだ。こうした費⽤以外にも、家族の理解と協⼒が必要となる場合もある。
 さらに問題となるのが職員の体制だ。少数精鋭の施設で向学⼼にあふれる職員が不在となった場合、残された職員の負担が増える。経営者としては職員の育成を図りたいが、多額の費⽤と職員の不在を代償とするには「あまりにも⼤きな負担」(横倉院⻑)となる。
 また、新⼈・中堅育成の体制などについて、横倉院⻑は「今後の職員募集に⼤きな影響を及ぼす」と指摘。⾃施設で研修できれば、旅費は不要で職員不在の影響も⼩さく、さらに多くの職員の育成が可能になるという。
 横倉院⻑は、院内で医師が同席できない時の⼿技も看護師が特定⾏為として実施できるメリットに加え、地域包括ケアシステムが進められる院外では、その有効利⽤のメリットは計り知れないことを強調。研修実施施設になる前は、ほとんど使われなかった⾃習室で満席が⽬⽴つようになり、研修の受講⽣以外の職員も勉学に励むようになったという。

■「活躍できる場はいろいろ」、組織として受講促す
 組織で特定⾏為研修の受講を促しているケースもある。この⽇のシンポジウムで、洛和会本部の児島純司常務理事は、5000⼈の職員を擁する同会ヘルスケアシステム(5病院、1クリニック、特養・⽼健8施設、在宅サービスなど)において「活躍できる場はいろいろある」と説明した。
 特定⾏為研修を修了した看護師(以下、特定看護師)について、▽チーム医療の促進(急性期)▽在宅医療・介護の質向上▽向上⼼(⼈事管理)―などを組織として期待。具体的には、急性期では看護師のスキルアップに加え、在宅医療では急変時に⼿順書があれば対応できること、⼈事管理では医療と介護の連携などにつなげることが期待できるという。
 課題もあった。看護師を対象にしたアンケート調査で、特定⾏為の内容を⼗分理解していない看護師が少なくないことが判明。認知度を向上させるためには「組織⽀援が必要」とし、特定看護師を名札と服装で識別できるようにした。
 また、同法⼈の⾳⽻病院(京都市⼭科区)の5⼈の特定看護師が、▽呼吸器(気道確保に係るもの)▽呼吸器(⼈⼯呼吸療法に係るもの)▽⾎糖コントロールに係る薬剤投与関連▽術後疼痛管理関連▽循環動態に係る薬剤投与関連―の5つの特定⾏為を実践できることを広報誌でPRした。
 組織が⽀援できることについては、医師に特定⾏為の内容を知らせることに加え、医師を含めた多職種による「特定⾏為運⽤会議」の開催、⼿順書の作成⽀援、急性期・慢性期・介護での活躍シーンの具体化などを挙げている。

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