2018年8月からの高額療養費見直しに伴い、レセプトの記載要領も見直し―厚労省
MedWach 2018年8月21日
今年(2018年)8月から、70歳以上の高齢者における高額療養費の見直しに伴って、診療報酬請求書等の記載要領も見直すこととする―。
厚生労働省は8月17日に、事務連絡「『診療報酬請求書等の記載要領等について』等の一部改正について(再周知)」を発出し、改めての呼びかけを行いました(7月13日に関連通知「『診療報酬請求書等の記載要領等について』等の一部改正について」が発出されている。厚労省のサイトはこちら)。近く8月診療分の請求を行うことになると思われます。各医療機関に置かれては、こうした点についてもご留意ください。
レセコン対応遅れのケースを踏まえた特例措置も準備
医療保険財政が厳しくなる中で、保険制度を維持するために、「負担能力に応じた負担を求める」必要性が高まっています。財政の影響もさることながら、「公平感の確保」が制度への信頼を高めるために重要なためです。
この点、「所得の高い高齢者にも応分の負担を求める」こととし、社会保障審議会・医療保険部会の意見を踏まえて、厚労省は、70歳以上の高齢者における高額療養費の基準額(暦月の上限額)を▼2017年8月から▼2018年8月から―の2段階に分けて引き上げています。現在(2018年8月以降)は、次のようになっています(関連記事はこちら)(厚労省のサイトはこちら)。
【2018年8月からの見直しポイント】
▼現役並み所得者について「外来特例」を廃止し、入院・外来をあわせた「所得に応じた自己負担上限」を次のように設定する
●年収約1160万円以上(標準報酬月額83万円以上、課税所得690万円以上):25万2600円+(医療費-84万2000)×1%(多数回該当では上限額は14万100円)
●年収約770-1160万円(標準報酬月額53-79万円、課税所得380万円以上):16万7400円+(医療費-55万8000)×1%(多数回該当では上限額は9万3000円)
●年収約370-770万円(標準報酬月額28-50万円、課税所得145万円以上):8万100円+(医療費-26万7000)×1%(多数回該当では上限額は4万4400円)
▼一般所得者について、「外来特例」を1万4000円から「1万8000円」に引き上げるが、年間上限額は「14万4000円」で据え置く
所得の高い高齢者(現役並み所得、一般所得)では、2018年8月から高額療養費の自己負担上限額が引き上げられる
こうした見直しに合わせて、レセプトへの記載においても「70歳以上の患者において一部負担割合(1割、2割、3割のいずれか)、限度額認定証の記載内容(所得区分)を確認し、『特記事項』欄に新たな略号・略称を記載する」ことが求められます(関連記事はこちら)。
医療機関や訪問看護ステーションでは、高齢患者の一部負担割合(向かって左欄)、限度額認定証の記載(所得区分など、中央欄)を確認し、レセプトの特記事項欄にそれぞれ「右欄」の略号等を記載することになる
70歳以上の患者で「限度額適用認定証を受給している」にもかかわらず、医療機関や訪問看護ステーションで当該認定証が提示されない場合には、上表のとおり▼一部負担金等の割合が3割の場合は「26区ア」▼2割または1割の場合は「29区エ」—と記載することになります。この場合、患者が上限を超えて一部負担(窓口負担)を支払う可能性が出てきますが、その場合には、患者が各保険者(健保組合や協会けんぽ、国保、後期高齢者医療など)に超過分の払い戻し請求を行うことになります。
なお、レセプトコンピュータの対応が間に合わないなどの理由で、「特記事項」欄等が未記載で請求されたレセプトについては「今年(2018年)11月請求分までは、一律に返戻せず柔軟に対応する」ことになっています(厚労省から社会保険診療報酬支払基金・各国民健康保険団体連合会に連絡済)。具体的には次のように対応されます。
▽3割負担の患者に関するレセプトについては、「特記事項」欄の略号等を「区ア」とみなす。ただし、▼「負担金額」「一部負担金額」と請求点数から3割分ではない場合▼「区ア」の限度額に一致していない場合—には、「区イ」または「区ウ」に該当すると疑われるため、返戻等によって略号等の確認・記載を行う
▽2割または1割の患者に関するレセプトについては、「特記事項」欄の略号等を「区エ」とみなす。ただし、摘要欄等において、低所得IIまたは低所得Iの確認ができた場合は「区オ」とみなす
▽医療保険と特定疾病給付対象療養の併用レセプトの場合についても返戻等により略号等の確認・記載を行う
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