新事業「適法」お墨付き グレーゾーン解消制度浸透…○自己採血結果 薬局が伝達 ×結婚式リハでヘアメイク
読売新聞 2018年8月20日
ドラッグストアで顧客が採血して行う簡易血液検査。グレーゾーン解消制度でお墨付きを得て、普及した(3日、東京都内で)
新たに事業を始める企業で、「グレーゾーン解消制度」を活用する動きが広がり、新ビジネスも生まれている。事前に当局から問題ないとのお墨付きを得られることが、安心感につながっている。ただ、当局による適否の判断があやふやな事例もあり、制度の運用に一段の改善が求められそうだ。
「医業」にあらず
「とても好評で、繰り返し利用するリピーターもいます」
東京都板橋区にある大手ドラッグストアに勤める管理薬剤師の海老昌子さん(58)は話す。利用客は親指大の器具を自分で使い採血し、店側が検査機関に送る。10日程度で、コレステロールや血糖値がわかる手軽な検査だ。この簡易血液検査は三菱ケミカルホールディングスの関連会社「健康ライフコンパス」が手がけている。2013年の開始当初、薬局の従業員が検査結果を伝えることが、医師法で医師のみに認められる「医業」にあたるのかどうか不透明で、医業にあたると違法となる恐れがあった。
そこで14年にグレーゾーン解消制度を利用。所管する厚生労働省から問題がないとの見解を得られると、簡易血液検査を扱うドラッグストアは急増した。現在は全国約1670店でサービスを提供している。
ほかにも、音楽コンサートなどに向かうドライバーに、同じイベントに向かう他人を同乗させるために紹介するサービスが問題ないと認定された。このサービスで同乗者はガソリンや有料道路の費用の一部を負担するものの、そのほかの料金を支払わない。道路運送法で規制される、有償運送の「旅客業」にはあたらないと判断された。
100件以上「○」
グレーゾーン解消制度は、規制に違反するかどうかの問い合わせを主に経済産業省が窓口となって受け付け、所管する省庁と協議し、責任を持って回答することが義務づけられている。6月末までに128件の問い合わせがあり、おおむね1か月以内に回答されている。このうち100件以上が規制上、問題ないと認定された。
制度を利用した結果、認められなかったのは、結婚式リハーサル時の式場でのヘアメイクなど一部にとどまる。美容師法上、ヘアメイクなどの美容行為を事業として行うのは美容院に限られており、結婚式はヘアメイクが特例で認められる「儀式」にあたる。しかし、リハーサルは特例に該当しないとされた。
グレーゾーン解消制度が始まる以前は、企業が規制官庁に問い合わせても、部署間をたらいまわしにされたり、回答まで時間がかかったりすることもあった。
あいまい判断も
ただ、グレーゾーン解消制度でも、省庁側の回答が「グレー」のままのケースもある。
美容院でのうぶ毛そりが美容行為で認められない「理容」かどうかについての問い合わせに対し、厚労省の見解は「軽い程度の顔そりを超えた場合には理容に該当する」。どの程度が適法かまでの判断を示さなかった。
企業による新事業を後押しするためにも、行政側には明確な判断を示す努力が必要と言えそうだ。
【グレーゾーン解消制度】 現在ある規制の対象が不明確な場合、新しいビジネスを検討している事業者が当局に対してあらかじめ規制に抵触していないかどうかを確認できる仕組み。産業競争力強化法に基づき、2014年に制度が始まった。
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