【東京】わが道行く医療費無料化 75歳以上、町が独自助成 「2025年 超寿社会」「岐路の皆保険」

共同通信 2018年7月30日

 「ありがたいねえ」。6月下旬、東京都日の出町の役場窓口を、75歳の誕生日を間近に控えた佐久間庸夫(さくま・つねお)が訪れた。西多摩地域に位置する同町は人口約1万7千人。国の仕組みでは75歳以上の医療費の自己負担は原則1割だが、これを無料にする全国でも珍しい独自の助成制度を町は設ける。
 佐久間は血圧と肝臓の持病があり、5種類の薬を毎月処方されている。月約1300円かかっていたが、今後は病院の領収書を役場に提出すれば支払った分が戻ってくる。「寿」と書かれた医療証を手に「妻も医者にかかるし、先々を考えると助かる」と笑顔を見せた。
 町は2009年度に75歳以上の無料化を開始。18歳以下も無料にしており、町長の橋本聖二(はしもと・せいじ)(83)は「子育て世代にも高齢者にも、平等に税金を還元する」と話す。
 「無料化実施で病院が高齢者のサロン代わりになり、医療費が増えるのでは」との懸念もあったが、町によると1人当たり医療費は横ばいで、都の平均を下回る。高齢化が進む中、制度を維持できているのは大型ショッピングモール誘致による税収増や、ごみ処分場設置に伴う交付金などの歳入が大きいようだ。
 自治体独自の助成で高齢者医療費を負担ゼロにする例は他にもあるが、曲がり角の地域も。長野県原村は1971年、75歳以上の無料化を開始。のち65歳以上に拡大した。だが90年度に1276万円だった助成費用は2000年度に4250万円、17年度は1億850万円と右肩上がり。このため対象年齢を段階的に引き上げており、25年度から70歳以上とする。
 高齢者の医療費無料化は1960年代初め、岩手県沢内村(現・西和賀町)が踏み切ったのがさきがけ。東京都をはじめ全国各地に広がり、後押しされる形で国も73年に70歳以上を無料化した。
 「一度タダにしてしまうと、元に戻すのはものすごく難しい」。同年、厚生省(現・厚生労働省)に入った国際医療福祉大大学院教授の中村秀一(なかむら・しゅういち)(69)の弁だ。同省は83年に老人保健制度を導入して一部負担を復活。無料化の撤回に10年かかった。2008年には同制度を現在の後期高齢者医療制度に衣替えした。
 人口の多い団塊の世代が22年以降、後期高齢者に仲間入りし始める。政府内では「今の1割負担を2割に上げないと持たない」(財務省幹部)との声が上がる。中村は「年齢で区分するのではなく、支払い能力に応じた負担に見直すべきでは」との見方を示す。わが道を行く格好の日の出町や原村は今後、どんな道を選ぶのだろう。

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