NDB・介護DBの連結解析実現へ、法改正に向け議論開始

Medifax digest 2018/7/6

 レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)と介護保険総合データベース(介護DB)の連結解析やデータの提供に関する議論が本格化してきた。
 5月に発足した厚生労働省の有識者会議では、両DBの連結に向けて、それぞれの根拠法を改正する方針がおおむね固まっている。現在はガイドラインに基づき判断している第三者提供についても、改正法に位置付ける方向となった。7月中にも中間取りまとめを社会保障審議会の医療保険部会と介護保険部会に報告し、高齢者医療確保法と介護保険法の改正に向けた議論を開始する。早ければ来年の通常国会に法案を提出する見通しだ。
 厚労省が有識者会議に示した主な検討テーマは、▽個人情報保護法制等との関係▽データの収集・利用目的、対象範囲▽第三者提供▽実施体制▽費用負担▽技術面の課題(セキュリティーの確保等を含む)―の6項目。これまで、主に「データの収集・利用目的、対象範囲」と「第三者提供」について議論した。
 両DBに共通しているのは、▽社会保険制度が基盤の悉皆的なDB▽レセプト情報の二次利用による匿名DB▽関係者の理解・協力をベースとしたDB―であること。項目が標準化されている上、全国はもちろん、地域・保険者別にも対応しており、サービス利用のほか、提供体制や保健医療・福祉分野などの学術的な分析も可能。ただ、あくまでも匿名データであり「本人の個別同意に基づくものではない」ことは留意する必要がある。そのため「本人の特定がされず、公益性が担保されること」が必須となる。

●効果的かつ効率的な医療介護提供体制へ
 NDBと介護DBの連結解析については、2017年6月9日に閣議決定した「骨太の方針2017」に、「健康・医療・介護のビッグデータを連結し、医療機関や保険者、研究者、民間等が活用できるようにすること」と記された。現在、それぞれで収集や管理、分析されている両DBの情報を連結解析し「効果的で効率的な医療介護の提供体制や地域包括ケアシステムの構築の推進」につなげる狙い。20年度からの本格運用を目指している。
 有識者会議の初会合では、松田晋哉構成員(産業医科大教授)がある自治体の医療と介護のデータを連結解析し、疾患別に発症前後の要介護度の変化を調べた研究結果を説明した。それによると、「筋骨格系疾患」の場合は要介護度が低い状態で小さな悪化と改善を繰り返しており、「がん・慢性心不全など」は、要介護度が中度~重度の間を行き来していた。他方、「脳血管障害・骨折」は発症直後に重度の要介護となり、いったん中度まで改善し、最終的に重度に戻る動きが見られた。「認知症」のみ、軽中度から徐々に重度化する一方向の動きだった。
 松田構成員の研究は、自治体と個別に契約を結び、医療と介護の匿名データを入手・解析したもの。NDB・介護DBの連結が実現すれば一定の枠組みの下、全国規模で同様の研究が比較的スムーズに進められるようになる。松田構成員は「PDCAサイクルに基づいた公衆衛生施策を展開することが可能になる」とメリットを解説した。構成員からは、連結解析に期待を寄せる声が相次いでいた。

●今後、対象DBを拡大し議論
 中間取りまとめ後、報告書をまとめる秋ごろまでには、▽DPCDB▽全国がん登録DB▽難病DB▽小慢DB▽MID-NET―などについても、連結に向けた議論を進める予定だ。これらのDBとの連結により、創薬などにつながる可能性も期待されている。
 樋口範雄構成員(武蔵野大特任教授)は今後の議論を見据え、NDBと介護DBだけでなく全てのDBを対象とする枠組み(法)の策定を提案した。それに対し厚労省は、DBはそれぞれ構築された経緯や目的などが異なるとし、別立てで検討することに意味があるとの考えを示した。特に難病や小児慢性特定疾患などのデータは、慎重な検討が必要となりそうだ。
 また、厚労省が示している検討テーマ以外でも、有識者会議で武藤香織構成員(東京大教授)が指摘した「連結によるメリットを国民に理解してもらうこと」も非常に重要な課題ではないだろうか。「よく分からないが、自分のデータが使われている」と患者・利用者に思われてしまう状況は、スムーズな運用の妨げになりかねない。国民理解の醸成が進むような、丁寧で分かりやすい情報発信が求められる。

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