同じ医師に継続的に診察してもらうことで死亡リスクが下がる可能性
診察医を定期的に変えるよりも、同じ医者に診察してもらい続ける方が死亡リスクが低くなる可能性が最新の研究により報告されています。
Continuity of care with doctors—a matter of life and death? A systematic review of continuity of care and mortality | BMJ Open
https://bmjopen.bmj.com/content/8/6/e021161
Keeping the same doctor reduces death risk, study finds | Science | The Guardian
https://www.theguardian.com/science/2018/jun/29/keeping-the-same-doctor-reduces-death-risk-study-finds
これまでにも同じ診察医に継続的に診てもらうことには、ワクチンやその他の予防措置の実施を促進し、救急入院の減少など多くの利点があると指摘されていました。エクセター大学のデニス・ペレイラ・グレイ卿率いる研究チームは、文化と医療システムが異なるアメリカ・イギリス・韓国・イスラエルなどの9カ国で1996年から2017年の間に実施された726件の研究を検討し、「医療の継続性」と「患者の死亡率」の関係性に注目しながら、それぞれの研究データの分析を行いました。
その結果、「医療の継続性」と「患者の死亡率」の両方に言及していたのは22の研究で、そのどれもが2010年以降のものでした。そして22件のうち18件で、2年以上継続的に同じ医者の診察を受けた患者の死亡率は統計的に有意な低下を見せていたことが判明。この研究結果は、物理的な治療だけではなく、精神的な部分も医療において重要であることをあらためて示しているといえます。
グレイ卿は「医療行為の人間的側面が、患者の健康に大きな意味を与える可能性があるということは今までも示されてきました。医師は『医療の継続性』をより重視する必要があります」とコメントしています。ただし、複数の病気を患っているためにさまざまな医者から診察を受けると同時に死亡リスクが高まるというケースもあるため、研究チームは今回の研究結果が必ずしも「継続的な医療が死亡リスクを下げる」ということを意味するわけではないと述べています。加えて、共同研究者のフィリップ・エヴァンス教授は「患者と医者がお互いをよく知ることで、治療の継続性が意味を持つようになります。患者と医者のより良いコミュニケーションが患者の満足度・医者のアドバイスの順守・通院率の低下につながると考えられます」と語り、同じ診察医にかかり続けることで患者と医者の間に生まれる人間関係が、医療において重要な役割を果たす可能性を示唆しています。
近年に入って「継続的な医療」の重要性が研究される背景には、イギリスの 総合診療医制度があります。日本では病気にかかった時に総合病院の専門医をいきなり受診することができますが、イギリスでは総合診療医をまず受診した上で専門医への紹介を受ける必要があります。総合診療医は患者とより距離が近い存在であり、病気の診察や治療だけではなく、患者の生活面や精神面へのサポートが必要とされます。
しかし、イギリスでは、経済的な理由で閉鎖する診療所が続出していて、2013年から2017年の間に 130万人の患者が掛かりつけの総合診療医の変更を余儀なくされるという事態が起こっています。今までほとんど注目されてこなかった継続的な医療の重要性が注目されることで、同じ総合診療医に診察してもらうために医療政策の見直しが問われる可能性もあります。
Royal College of General Practitioners(王立総合診療医学校)のカミラ・ホーソーン教授は「1人の患者と1人の総合診療医を結びつけるのではなく、総合診療医を含んだ医療従事者のチームで患者をサポートしていくことによって、継続的な医療に取り組んでいくつもりです。継続的な医療と総合診療制度のバランスを取ることは医療一般にとって大きな課題であり、結局総合診療医など医療従事者をもっと増やさなければ解決できません」とコメントしています。
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すぐに考えていないけれど、少しでも御関心があれば、とりあえず雑談させて下さいませ。