茨城新聞　2018年7月2日

「若年性認知症支援コーディネーター」をご存じだろうか。厚生労働省の推計では全国で約３万７千人（２００９年時点）とされる若年性認知症。老年期に発症する認知症と比べ「働き続けられるか」「子どもの養育費はどうするか」など本人や家族が抱える問題は複雑だ。「就労」や「医療」など、多面的に橋渡しする県内唯一の「若年性認知症支援コーディネーター」が、筑波大学付属病院認知症疾患医療センターにいる。
　「何科を受診すればいいですか」「治らないのでしょうか」「仕事、続けられますか」。若年性認知症支援コーディネーターの中野明子さんのもとには、県内外から１日当たり２、３件の電話相談が寄せられる。本人や家族、ケアマネジャーなどからだ。気持ちに寄り添い、じっくり話を聞くため１時間から２時間も電話で話し続けることもあるという。
　中野さんは社会福祉士、精神保健福祉士、介護支援専門員でもある。４０代後半、数年にわたる義父母の介護で周囲に支えてもらった。「支えになりたい」。認知症介護研究・研修大府センター(愛知県)などで研修を受け、今年４月から県の委託を受け、若年性認知症支援コーディネーターを務めている。
　若年性認知症の平均発症年齢は５１・３歳。働き盛りの年代だ。抱える悩みは生活全般、人生全般に及ぶ。特に就労の問題は、家計に直結するため深刻だ。
　６月のある日、「忘れてしまうので、うまく説明できない。(会社との)間に入ってもらえませんか」―５０代男性から相談が寄せられた。「仕事を継続できるよう、職務環境の調整を会社とともに考え、生活を支援するのも私の役目」と中野さん。「１人じゃない。改善の糸口は必ずある。声を上げてほしい」
　県内には、認知症疾患医療センターが1３病院ある。若年性認知症支援コーディネーターは、多方面からの支援が必要なことから、県が昨年６月から筑波大付属病院に配置した。
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　筑波大学付属病院・若年性認知症支援コーディネーター（電）０２９（８５３）５８４６。（月―金曜日・午前９時～午後４時）

■予防へ生活習慣病避けて　筑波大学精神医学教授・同大学付属病院　認知症疾患医療センター部長　新井哲明
　老年期で発症する認知症と比べ、６５歳未満で発症する「若年性認知症」は、まだ実態が分からない部分が多い。そのため昨年から、同大学も参加し、県内の実態も含め、全国レベルで若年性認知症の実態調査を数年かけて行っている。
　代表的な認知症は、４大認知症といって「アルツハイマー病」「血管性認知症」「レビ-小体型認知症」「前頭側頭型認知症」がある。老年期でも若年性でもアルツハイマー病が最も多いのは共通しているが、若年性では、「前頭側頭型認知症」の比率が高くなる。
　前頭側頭型認知症の症状は、初期は記憶障害がまったくないため、本人や周囲も気付きにくい。行動の異常や場にそぐわない言動をする性質がある。
　一方アルツハイマー病では、「もの忘れが激しい」「仕事上で同じミスをしてしまう」「料理の味付けが変わった」などの症状で受診する人が多い。やる気や意欲の低下の症状で受診し、うつ病と間違えられることもある。
　認知症の予防策は、老年期も若年性も生活習慣病にかからないことだ。糖尿病、高脂血症、高血圧にならないことが大事。糖尿病になると２倍以上、アルツハイマー病になりやすい。
　また、運動は非常に大事。散歩や体操などの有酸素運動をはじめ、最近の研究では、無酸素運動の筋トレも良さそうだと言われている。脳を活性化させる「脳トレ」も注目されている。
　県内には、認知症の対応力の研修を受けたかかりつけ医が８２５人、認知症サポート医は９４人いる（３月末時点）。おかしいと思ったら、早期に治療を開始するためにも、まずは、身近なかかりつけ医に相談してほしい。

〈県内の認知症疾患医療センター〉
汐ケ崎病院（水戸市）（電）０２９（２６９）９０１７
石崎病院（茨城町）（電）０２９（２９３）７１６５
日立梅ケ丘病院（日立市）（電）０２９４（３５）２７６４
志村大宮病院（常陸大宮市）（電）０２９５（５８）８０２０
栗田病院（那珂市）（電）０２９（２９８）１３９６
鹿島病院（鹿嶋市）（電）０２９９（８２）２１６７
豊後荘病院（石岡市）（電）０２９９（３６）６００７
とよさと病院（つくば市）（電）０２９（８４７）９５８１
池田病院（龍ケ崎市）（電）０２９７（６４）１１５２
宮本病院（稲敷市）（電）０２９９（９４）３０８０
小松崎病院（筑西市）（電）０２９６（２４）２４１０
古河赤十字病院（古河市）（電）０２８０（２３）７１２１

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